あどけない話

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5回目のレッドポイント

「モンスター・パニック」(5.12b)目当てで通いだした金毘羅岩。「メリーゴーランド」(5.12a)に浮気したのは、モンスター・パニックが濡れていたからだ。10月28日のことだった。

スタートのボルダームーブは、簡単に解決できた。外岩のボルダリング・グレードはよく分らないが、みな口を揃えて4級だという。

その上が核心。乏しいホールドに耐えて薄被りを登る。ここのムーブはまったく起こせなかった。さらに薄被りを登り、右にトラバースしてから、ガバのどっ被り地帯に突入する。最後のクリップを終えたあと、左の甘いホールドに耐えて、終了点手前のスローパーへ右手を出すムーブが悪い。

11月23日。延べ4日にして、ようやくすべてのムーブを解決し、レッドポイント体勢に入った。モミジの葉は、まだ緑色だった。

11月25日にワンテンに持ち込み、12月2日には妻の前で完登するつもりだった。そのトライは、最後のクリップの時点で激しくパンプしていたが、気合いで右手を出し、スローパーを止めた。これで登れたと思ったのも束の間、前腕が悲鳴を上げて、左足が上がらない。どうすることもできずに、テンションと叫んだ。

これが一手地獄の始まりだった。モミジは赤や黄色に色づいていた。

12月8日。一便目は終了点手前で余裕があり、スローパーは簡単に取れた。しかし、また何もできない。二便目はまったくダメだった。スローパーで持つのはダメなのだろう。次はカチ持ちにすると決めた。

翌日の一便目。激しく疲労しながら、また右手のスローパーを止め、カチ持ちにするも、やはり左足が上がらない。二便目は、下のボルダーで落ちる始末だった。最後にスローパー付近を探り、奥にカチを発見。左手をスローパーに沿えてから、そのカチに飛ばし、右手で第二終了点を取るというムーブを確認してから帰った。

そして今日。モミジの葉はすっかり散って、岩場から色彩が消えていた。一便目。ホールドが湿気をおびているのか、滑る気がする。最終クリップ手前で力尽きて落ちそうだったが、怪我の功名でお尻を乗せる楽なムーブが見つかった。激しく疲労していたが、右手をスローパに出す。ここから左手を添えようとするが、添えられずテンション。

もう、4回レッドポイントしたと言っていいだろう。最後に残された手は、右手をスローパーからカチへ飛ばすことだ。右手が耐えられないのだし、動かせるのは右手だけだから、利にかなっている。僕はカチラーだから、カチを持てば左足は上がるだろう。このムーブをさんざん確認した。

二便目は登れる気がしないので、気分を変えて「平成のぽんぽこ」(5.10b)を登る。あっさり、オンサイトした。そして、体を温めようとウォーキングしていると、不思議と疲れが取れ、力が戻って来た気がした。

ダメ元の二便目。ボルダーの後のニーロックは、両手を放せるかのように決まった。核心のホールドも簡単に取れ、ガバでレスト。焼き石で手を温めるが、完全には戻らない。一便目程、力は出ないが、岩の湿気はなくなり滑る気がしない。トラバースからガバ地帯へ突っ込んで行く。持てているか分らない程度の力でも落ちる気はしない。気がつくと、余裕を残して、最後のクリップをこなしていた。

スローパーへ右手を出す。少し引きつけてから、デッドで右手を飛ばす。カチが取れた! 今まで動けなかったのが嘘のように左足が上がり、左手で終了点を掴んだ。久々に吠えた。二回吠えた。

ようやく登れたよ。 (祝)二本目の 5.12a:「メリーゴーランド」!