あどけない話

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異次元への旅

南部博士がノーベル物理学賞を受賞しましたね。物理学ファン、そして南部博士のファンとして、心からお喜び申し上げます。

きっと南部博士の著書を買って、にわか物理学ファンになる人も多いでしょう。

クォーク 第2版 (ブルーバックス)

クォーク 第2版 (ブルーバックス)

この本は、物理学者の視線から書かれています。仮説の提唱と実験による実証など、物理学の紆余曲折がそのまま記述されているので、こ奇麗にまとまっているとはいえません。予備知識がないと、読みこなせないと思います。

南部博士の「ひも理論」や、それを復活させた「超ひも理論」、そして最新の「M理論」などを整理された形で知りたければ、『マンガでわかる「超ひも理論」』がお勧めです。物理学の本をたくさん読んでみて、これが一番だと感じています。題名にマンガという言葉が入っていますが、あなどってはいけません。

マンガでわかる 超ひも理論 (宝島社文庫)

マンガでわかる 超ひも理論 (宝島社文庫)

南部博士の「ひも理論」は、26次元でしか安定しませんでした。当時の物理学者は、アインシュタインが提唱する4次元の時空に慣れており、26次元と言われても理解の範疇を超えていたのは当然です。

僕が高次元の世界を理解できるようになったのは、「アインシュタインを超える―宇宙の統一理論を求めて」を読んでからです。この本は、物理法則のすべてがたった一つの数式から導きだせるという興奮を余すところなく伝えています。また、南部博士とファイマン博士のやりとりを載せていて興味深いです。

アインシュタインを超える―宇宙の統一理論を求めて (ブルーバックス)

アインシュタインを超える―宇宙の統一理論を求めて (ブルーバックス)

この本には、「異次元への旅」という章があり、*空間的*な高次元を理解するためには、低次元を研究すればよいとして、名著「フラットランド」の要約を載せています。

Flatland: A Romance of Many Dimensions (Dover Thrift Editions)

Flatland: A Romance of Many Dimensions (Dover Thrift Editions)

原文はインターネットで公開されています。

この本は、2回翻訳されましたが、残念ながら現在はどちらも絶版です。

多次元・平面国―ペチャンコ世界の住人たち

多次元・平面国―ペチャンコ世界の住人たち

二次元の世界―平面の国の不思議な物語 (ブルーバックス 315)

二次元の世界―平面の国の不思議な物語 (ブルーバックス 315)

僕はブルーバックスの古本を買いました。

フラットランドは、その名の通り二次元の世界です。縦横はありますが、高さはありません。高さと言われてもどちらに測っていいのか分らないのです。(高さの次元は、プランクの長さにまるまっていると考えられます。)

この物語の語り手である正方形氏は、三次元世界からやってきた球氏に出会います。正方形氏から見ると、球氏は円にしか見えず、その円は大きくなったり、小さくなったりします。球氏からは、正方形氏の内蔵が透けて見えます。

アボットが描写するフラットランドは、設定が緻密であり、また息苦しい雰囲気の中で進む物語も見事です。正方形氏の異次元への旅は、どのような結末を迎えるのか?ぜひ、買って読んでみて下さい。古本は高い値がついていますが、絶対に損はしません。

蛇足ながら、僕が*時空*として4次元を理解できたのは、「ハッブル望遠鏡が見た宇宙」に載っている130億光年離れた銀河の写真を見たときです。

カラー版 ハッブル望遠鏡が見た宇宙 (岩波新書)

カラー版 ハッブル望遠鏡が見た宇宙 (岩波新書)

その銀河から地球に光が届くのには130億年かかります。つまり、僕たちが見ているのは、その銀河の130億年前の姿なのです。

広大な宇宙では、「同時」という概念が無意味であるということが実感できました。