あどけない話

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文章の書き方(岩波新書)

私にとっての文章の土台を便宜的に分類するとしたら、3つに分けられるだろう。

一番目は、大学の研究室での訓練。私が所属していた九大の牛島研では「推敲」というソフトを作っており、先輩たちの発表は、どういう文章が曖昧で、それをいかに見つけ出すかという内容が多かった。「父の写真」といった曖昧な文章をこれでもかと見せられるのである。学生時代に、曖昧な文章とは何か、正確な文章を書くにはどうすればいいか、じっくりと考える時間が取れたのは実に幸せだった。また、牛島教授はカタカナの使用にもうるさい人で、この指導にはとても感謝している。

二番目は、UNIX Magazine の連載中に編集長から教えて頂いたこと。たとえば、「山本くんは文章がうまいけど、『非常に』と『行う』という言葉が多いね」と指摘された。今思えば、つまり「文章が下手だ」と優しく諭して頂いた訳だ。それ以来、僕はこの二つの言葉をいっさい使わなくなった。嘘だと思うかもしれないが、本当に使っていない。使わないで文章を書くのはとても窮屈だが、苦しんだ分、語彙が豊かになった。

三番目は、岩波新書の「文章の書き方」。「文章に関する本を一冊だけ紹介して下さい」と言われれば、私は躊躇なくこの本を選ぶ。この本の内容に関して、あれこれ言う必要はないだろう。もし、文章がうまくなりたいと思うなら、この本を読もう。繰り返し、繰り返し、読もう。そして、実践しよう。

文章の書き方 (岩波新書)

文章の書き方 (岩波新書)

自戒の念を込めて、この本で紹介されている川村さんの言葉を引用しておく。

「芸もないのに適当に悪口をいう。そうすると、文章を書いたみたいになれますからね。…今の人に悪口は書けても、いいラブレターは書けない。いいラブレターを書くには、自分を見さだめるのと、対象を見さだめるのと、自分と対象との間に距離があって、その関係がどういう意味を持つかということを把握して、しかもそれに希望的観測をつけ加えるってことをしなくちゃいけない。書けないでしょうね。」