あどけない話

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山口でのエギング振り返り

「分かってしまうと、なぜ分からなかったのか分からなくなる」

と言うわけで、いつもは技術的なことしか書かないけれど、今回は「なぜ以前はアオリイカが釣れなかったのか」を忘れない内に書き留めておく。

2022年

親の介護のため、2022年の3月末に、東京から故郷の山口へ引っ越した。瀬戸内の街である故郷では子供達と釣りを楽しもうと思い、「生餌の付けられない子供と一緒にやるにはエギングがいいかな」という軽い気持ちで始めた。

湖畔のキャンプのときに買った2,000円ぐらいのバスロッドを使い、格安のエギを買って5月ごろにエギングをやってみたが、まったく釣れなかった。今思えば当たり前だけど。釣れないので子供達は飽きてしまい、エギングには付き合ってくれなくなった。

秋になり、娘の習い事を待つ間に、近くの漁港に行って、20分だけエギングをやった。しかし、何度やっても釣れない。言い訳できないように、すごく釣れると言うエギ王K ムラムラチェリー2.5号を買い、「今日釣れなかったらやめる」と言う気持ちで、明かりの消えた漁港で竿を振った。10月6日の夜のことだ。

「これがラスト」と思って投げたエギを、ただ巻きしていると急に重くなった。初めはゴミがかかったのか思ったが、何か違う。足元でヘッドライトを当ててみるとアオリイカで、無造作に引き上げた。初めて釣れたというのに、当たりが取れなかったせいか、あまり嬉しくはなかった。

よくやめなかったと思う。このアオリは、エギングの神様が「エギングをやめるな」と与えた1杯だったのかもしれない。

2023年

介護や子供の世話が忙しく、あまり記憶がないのだけれど、春はエギングをやならなかったと思う。このころ、「ウチの近くにはアオリイカなんて、ほとんどいないんだ」と思い込んでいた。釣れると聞いたエギ王K 軍艦グリーンも、まったく市場に出回ってなかった。

9月24日の親戚の集まりで、Tさんから「俺は港の藻がある方側で2杯釣ったぜ」と言われ、少しやる気が出て、また待ち時間の間に行ってみた。下手過ぎて、すぐにエギを根掛かりさせてしまうので、ジュンテンドーで買った安いエギを単にただ巻きしていた。これまた、「これで帰る」と思って投げた一投で、生命感のあるピリピリとした当たりがあり、人生2杯目のアオリイカが釣れた。驚くべきことに、写真を撮っておらず、何日のことだったかはもう分からない。

この秋3杯釣ったら自分へのご褒美で、エギングロッドとリールを買うと決めていたが、釣具のポイントの店長さんと話していると、今すぐ欲しくなって、エントリーモデルを買ってしまった。竿は色々調べて決めていた「シマノ セフィア BB S83ML」、リールは店長の合わせた方がいいと言うススメに従い「シマノ セフィア BB C3000S DH」にした。

この後、フリーリグでチヌを釣ることに時間を使ってしまったので、2023年も釣れたのは秋イカ1杯だけだった。

2024年5月

4月に父を送り出し、雑多な手続きもこなして落ち着き始めた頃、またTさんから「今年のアオリはデカいらしい。俺は釣ってないけど」と言われ、夜にポイントを回ってみた。あるポイントには驚きの光景が広がっていた。たくさんの車が停まっており、椅子が丸く並べられていて、キャンプファイヤー状態。地面には、これまで見たこともない大きなイカが、「釣れるのが当たり前」みたいな感じで、あちらこちらに無造作に置かれていた。このとき初めて、自分の故郷に春イカの一級ポイントがあることを知った。

イカは自分の近くにいるし、竿とリールには投資したし、エギ王K 軍艦グリーンの在庫も復活した。これで釣れないのは、自分の腕が悪からだと素直に信じれるようになり、余裕が出てきた時間を使って、足繁くポイントに通った。そしてとうとう5月29日、春の大きなイカを釣り上げた。モンゴウだけど。

引き上げても横抱きしたエギを離さず、エギに噛み跡を残してくれた君には感謝しかない。モンゴウは細く切らないと美味しくないことを知らずに、息子には「美味しくない」と言われてしまった。まずかったのは、僕の調理の腕だ。許してくれ。

僕にも大きなイカが釣れることが分かり、火がついた。どうしても春のアオリイカが釣りたい。上手な人たちに混じって初心者の自分が釣るには、違うことをするしかないと思い、youtubeで見たスローエギング(リフト&フォールみたいな感じ)をやっみることにした。

次の日の夜、よい場所に入れたので、そこだけ波が立っている場所に軍艦グリーン 3.5号 シャローを投げ、ゆっくりゆっくり誘っていると、もわーん、もわーんとした生命反応を感じた。どう合わせていいのか分からず、乗ったのかどうかも分からないので、我慢してゆっくりゆっくりエギを動かし、「もう逃げたかな」と思って巻き始めたら、急に重くなり一回だけ走った。

水面に現れた姿を周りの人が見付けて「アオリだ!」と言う。かなり近づいたとき、ようやく僕にも見えた。「触腕一本だから気を付けて」と言われるがどうしていいのか分からない。周りの上手い方に、「横に滑らすように」と教えてもらい、何度もやり直して、ようやくタモ入れできる体制に持ち込んで、タモ入れしてもらった。

苦節2年を経た2024年5月30日、ついに春のアオリイカ(オス 926g)を釣り上げた。本当に嬉しかった。

2024年6月

エギング歴の長い方とたまたまポイントで2人きりになったときのこと。僕のしゃくり方がおかしいと指摘していただたいた。「ショートジャークをしているつもりだろうけど、ハンドルを回しているから、エギはまっすぐにしか動かず、すぐに戻って来てしまう。竿を回すようにすると、エギは斜め前方に動くから、岸に向かっての移動距離は短くなり、イカを多く誘える」と教えていただいた。ショートジャークはエギをダートさせるため、つまり横に動かすのが目的だとまったく分かっていなかった。

6月も半ばを過ぎると、多くの人がまったく釣れなくなり、釣り人の数も少なくなった。僕は大潮にはまだアオリが入ってくるだろうと信じ、気になっていたパタパタを買って、6月19日の夕刻に海へ向かった。すると、奇跡的に一投目で釣れた。安定のしゃくり合わせ。両隣の人も、僕の真似をしてパタパタに変えると釣れて3連チャン。時合だったのだ。1172gと夢のキロアップ! メスを持ち帰ってはいけないというルールはないそうで、心に余裕のない僕は持って帰ることにした。(クワガタのメスは取らないよ。本当だよ!)

僕が行くポイントには、みんなが釣れてない中で必ず釣って帰る人がいる。その人に話しかけてみると、「エギング歴25年で、ほとんどボウズはない」と言う。その人の隣で竿を振りながらいろいろ教えてもらった。「君のエギはダートはしているが、跳ね上がっていない」と言う。「2段しゃくりと言う言葉は古いのかもしれないけれど、上に動かさないとイカのスイッチが入らない」そうだ。「潮が動いているかはゴミの位置を観察したら分かる」。「エギはプロスペックの薩摩オレンジで、ローテーションはほとんどしない」。「フケ当たりっていうのは、こんな感じ」と実演してくださった。

そのときから、エギを動かすときに、跳ね上げとダート、つまり縦の動きと横の動きを意識するようになった。すると、その日の内に1375gの大物が釣れた。モンゴウだけどね。6月29日、エギはエギ王K 金アジ 3.0号。

2024年7月

7月4日にまた同じエギでモンゴウが釣れた。この日は自分しかいなかったので、初めて一人でタモ入れしたけど、イメージトレーニングはばっちりで、手際よく引き上げた。計量を忘れしまったので、重さは分からないが、中ぐらい。

そして冒頭の呟きをしたわけだ。次の日にしゃくり合わせでかかったイカは、走る走る。ドラグが鳴り止まず、かなり期待したのだけれど、浮き上がって来たのは873gのモンゴウだった。エギは、通販で手に入れたプロスペック 薩摩オレンジ 3.5号!

どうしてもアオリの3杯目を釣りたい。僕に残された手は朝マズメのみ。夜の家事を早めに済ませ22時には就寝して、7月8日は4時に起きて海に向かう。最初はラインが見えない程暗かったが、明るくなってきた。長雨のせいで潮は濁っているから、底は澄んでいると願って薩摩オレンジで底を攻める。すると、ラインが一瞬フケるのが見え、間髪入れずに合わせると乗った!396gと小さいが、目標の3杯達成!

同日、高校の同級生から「今日は呑み会の日だ」と連絡があり、「前回日程を決めてなかったんだから知らんがな」と思いつつ、子供の送迎もないので、アオリとモンゴウのサクを店に持って行った。僕はアオリを自慢しに来ているのに、みな口を揃えて「モンゴウがうまい」と言う。同席していた親戚のRさんから「モンゴウをもう1杯釣れ」と指令が下った。あの方向に金アジを投げて底を攻めれば釣れると分かっていたので、「釣りますよ」と安請け合いをする。

寝不足なので次の日は普通の時間まで寝ると決めていたのに、4時に目が覚め雨は降っていない。エギングの神様に「海に行け」と言われた気がしたので、昨日と同じようにポイントに向かう。ノルマのモンゴウを釣るために、金アジを投げてしゃくるが、ラインが見えずしっくりこないので、回収を始めた。するとエギの後をロケットのように追ってくるイカがいて、ヘッドライトを当てたのに逃げない。慌ててエギを止めてフォールさせると抱いた!1296gのモンゴウに人生初のサイト・エギングをきめてノルマを達成。

墨跡を掃除しているとラインが見える程度に明るくなってきた。時合だと感じ、エギを薩摩オレンジに変えて底を攻める。風があるのでやりずらいが、ラインが一瞬だけフケたのを見逃さなかった。1089gとキロアップのアオリ! 1日2杯釣れるなんて夢のようだ。

釣り人も少なくなって快適だし、(ここがではなく、一般論では)夏もアオリが釣れないことはないらしいので、7月いっぱいはエギングを続けて、8月は休み、9月から秋イカを狙おうと考えている。

なぜ釣れなかったのか

まぁ結局、エギングに対する態度も中途半端だったし、何も分かっていなかった。

  • エギングにかける時間が短過ぎた → 時間をかけるしかありません。教えてくれる人に出会えると素敵ですね
  • ロッドやリールにお金をケチった → 3万円ぐらい出して、エントリーモデルを買いましょう。安い竿でエギングをやるのは時間の無駄です
  • ロストばかりするので、高いエギを買わなかった → 鉄板の「エギ王K」とか「パタパタ」とかを買いましょう。道具の中でエギが一番大切です
  • ロストを回避する方法と根掛かりしたときに回収する方法が分かってなかった → 底に着いたときの最初は強くしゃくるのをやめましょう。藻にかかったら、竿を斜め上に片手で細かくしゃくり続けると外れます
  • 自分の近くにはアオリイカはあんまりいないと間違った認識をしていた → 瀬戸内にもアオリイカはいます。日本海側に行く必要はありません
  • 縦の動きである「跳ね上げ」と横の動きである「ダート」の違いも分かっていなかったし、認識していなかったから動かし方も知らなかった → 「ワンピッチ・ショート・ジャーク」と「2段しゃくり」を覚えましょう
  • 潮が動くという意味も分かってなかった → ゴミを観察して短時間で移動したら流れてます。エギにかかる抵抗で感じることもできます
  • どの潮のどの潮位のときに釣れるか分かっていなかった → 生意気ですが、企業秘密とします
  • 当たりの取り方が分かっていなかった → 僕も夜だとよく分からないので、ラインが見える時間帯にやって、フケ当たりを見逃さないようにしましょう。底に着いたのか、フケ当たりなのか分からなくても、とにかくフケたら合わせるのです。夜でも運がよければ、生命感のある当たりも来るかもれません

最後に、あるロッククライマーが言った言葉で、このブログを締めくくることにする。

「長く続けていれば、いいことあるよ」

Happy Eging!