IT史に輝く「すべったテクノロジー」ベスト25の12位にIPv6が選出されています。
IPv6 は、当初の推進者の見込みよりも普及が遅れていますが、「すべった」と決まった訳ではありません。
IPアドレスの枯渇は以前から大きな問題とされてきた。一部の専門家によると、未使用のIPv4アドレスがいずれ足りなくなることは確実で、問題は「それがいつなのか」に尽きるという。米国も、この問題については、京都議定書の場合とは違って積極的な姿勢を見せており、連邦政府はすでに、「政府機関は 2008年までにIPv6に移行しなければならない」という決定を下している。
この著者は、APNIC の Geoff Huston 氏 が、枯渇の予想日を毎日更新していることなんて、知らないのでしょうね。
ではなぜ、IPv6への移行がスムーズに進んでいないのだろうか。答えは簡単だ。IPv6は、まだだれも直面していない問題への解決策だからである。いざというときには、NAT(Network Address Translation)などの応急処置的な手段もある。NATは、ネットワーク・エンジニアの負担を増やすという問題はあるものの、効果的に機能することが実証されている。
おそらく、自分が書いているNATが、何を指しているのかも分ってないのでしょう。
NAT とは NAPT のことであり、しかも ISP に導入が検討されている Carrier Grade NAT のことであると好意的に解釈してみましょう。
ISP が Carrier Grade NAT を入れたときの考察は、とても長くなるので、ここには書きません。しかしながら、TCP コネクションの数が制限されるために、Web アプリが壊滅する可能性があることぐらいは知っておく方がいいでしょう。
上に貼付けたのは、Carrier Grade NAT が入った状態をエミュレートして、 Google Maps を見たときの画像です。(オリジナルのアイディアは、NTTC 宮川さんです。)
技術的なことは分らなくても、使い物にならないことは一目瞭然でしょう。
またIPv6は、移行の苦労に見合うだけの魅力的な機能を提供してくれるわけでもない。あまりにも手間がかかりすぎるIPv6への移行を企業に促すには、見返りを得られるカーボン・オフセットのような仕組みが必要なのだろう。
IPv6 に魅力的な機能がないという認識は正しいです。大雑把に言って、IPv4 との違いは、アドレス空間の大きさだけだからです。
IPv4 と共存しながら、IPv6 へシフトしていく方法としては、2つ考えられてきました。
IPv6 へ斬新な機能を盛り込むという試みはすべて合意が得られず、IPv6 は IPv4 と代わり映えのないプロトコルに落ち着きました。これはすなわち、現在のインターネットを IPv6 へと誘うキラーアプリは発明できないことを意味しています。キラーアプリを作れなかったという意味では、「すべった」と言ってもいいかもしれません。
しかし、近い将来締め切りがやってきて、IPv6 へ移行するのか否かを迫られることになります。(もちろん、IPv6 へ移行しないという選択肢もあります。)