想像してみて欲しい。小さい頃に百科事典で「世界中のすべてのゴールデンハムスターは、たった一匹のメスの子孫である」という話を読んだとする。大人になって、この信じがたい話を証明できたとしたら、一体どんな気分だろう?
本書は、ミトコンドリアDNAが解き明かす、人類の歴史の物語である。
DNA は両親から受け継ぐ。そのため、ある人の DNA に関与した先祖の数は、代をさかのぼることに 2 倍に増えていく。だから、系譜をたどる目的に DNA を利用することは、通常ほぼ不可能だ。
ただし例外がある。ミトコンドリアの DNA だ。ミトコンドリアの DNA は、母親からしか受け継がない。よって、母の系譜をたどって行くことが可能になる。
著者は、ミトコンドリアDNAを使い、ハムスターに続いて次々と問題を解決していく。
- ポリネシアの人々は、アメリカから舟で渡って来たのか、あるいはアジアから来たのか?
- ヨーロッパの先住人類であるネアンデルタール人は、我々の直接の祖先であるクロマニョン人に滅ぼされたのか? あるいは混血したのか?
- 近東からヨーロッパへ農業をもたらした人々は、先住の狩猟民族を滅ぼしたのか? 逆に共存したのか?
内容は、実に痛快だ。真実の話でありながら、練られた作り話のように、ハラハラドキドキさせられる。科学ファンには、ぜひとも勧めたい書籍である。
- 作者: ブライアンサイクス,Bryan Sykes,大野晶子
- 出版社/メーカー: ソニーマガジンズ
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 54回
- この商品を含むブログ (33件) を見る
- 作者: ブライアン・サイクス,大野晶子
- 出版社/メーカー: ウィーヴ
- 発売日: 2006/11/01
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る